こんにちは!RGFインドです。
現在インドはGDP(国内総生産)ランキング5位となり、2025年には日本を抜き世界4位となる予想がされております。
インドが成長している理由として、
・人口数世界一(世界人口の約17.8%、つまり世界の5~6人に1人がインド人の計算)による人口ボーナス期:生産年齢人口(15~64歳)が14歳以下の年少人口と65歳以上の老年人口の合計を上回り、経済成長を促す状態になっている。
・道路、鉄道、電力供給、デジタルインフラに対しての投資拡大。デジタルインフラに関して、より多くの国民がアクセスしやすくなったことにより、インドにおけるデジタル決済額は、世界2位から5位の4カ国の合計を上回っている。
・3期目入りを果たしたモディ首相による「Make in India」政策をはじめとする産業育成策により国内外の企業がインドに生産拠点を設置していることが功を奏している。
・優秀な人材の豊富さと人口大国であること、インド政府がスタートアップ・インディアという政策を展開しており、手続きの簡略化や所得税の免税措置、基金の設置などを盛り込んでいることもあり、世界第3位のスタートアップ・エコシステムを有し、イノベーション創出や大規模雇用創出の機会として重要視されている。
等があげられ、既存分野・新規事業分野両方にて盛り上がっているからとなります。
このような勢いがあるインドで仕事や生活を通し成長したい・経験を積みたいと思われる方も多いと思いますが、インドがこのような発展を遂げた理由のうちの一つとしてあげられるインド文化に関して、今回は少しご紹介させていただきます。
Contents
インドの「Jugaad」とは?
読み方は綴り通りの「ジュガード」ではなく、最後のdの発音が弱くなることにより、カタカナに起こすと「ジュガール」と聞こえます。意味は英語に訳すと「Hack(ハック):工夫」に近いと言われており、ヒンディー語で「革新的な問題解決の方法」という意味になります。インド特有の創意工夫の精神を示す言葉となり、今身の回りにあるものなどの限られたリソースで即席の解決方法を見つけることを指します。
Jugaadについて記されたビジネス書「JUGAAD INNOVATION」内には、イノベーションを起こすための6つの基本原則が以下のように紹介されています。
①逆境を利用する(Seek opportunity in adversity)
困難な状況や社会問題をイノベーションのきっかけとして捉え、新たな価値を想像する。
②少ないものでより多くを実現する(Do more with less)
資金や資源が限られているなかでも、機転を働かせて解決策を見いだす。
③柔軟に考え、迅速に行動する(Think and act flexibly)
柔軟なマインドセット行動に移し、既存の枠組みを壊す。
④シンプルにする(Keep it simple)
過剰な機能を持たせることなく、シンプルに目的を果たす。
⑤末端層を取り込む(Include the margin)
主流でないターゲット層を考慮し、サービスが行き届いていない末端層の人々をあえて主な顧客とする。
⑥自分の直観に従う(Follow your heart)
型通りのマーケティングリサーチに頼らず、自分の直観を大切にする。
インドは多様性の国として知られています。約 600 もの言語が使われていると言われており、宗教に関してはヒンドゥー教以外にも仏教、ジャイナ教、イスラム教、キリスト教など多くの宗教が信仰され、国土が日本の9倍であることもあり食事や気候も場所により異なります。この環境での生活は、日常的に柔軟性と創造性を求める場となります。その中で生まれた『Jugaad』は、こうした多様性を背景に、制約を超えて成果やイノベーションを出すアプローチとして世界中から注目されています。
制約がチャンスに変わる「Jugaad」の魅力
国土の約7割がまだ未発展都市(Rural area)となるインドは、場所ごとにインフラやリソースが異なります。その場合に「他からこれを取り寄せればこれを作れる、これさえあればあれができるのに」というマインドセットではなく、自分の身の回りにあるものを生かして何ができるかに重きを置き考える習慣が身についている人がとても多いです。地方出身の起業家が考え出す上記の策はフルーガル・イノベーション(Frugal innovation:質素・倹約なイノベーション)とも呼ばれ、予算や時間、エネルギー、資材、資金、情報などのリソースが限られた中で、その土地・自身の身の回りで手に入るものを利用し、問題を抱えている人・状況の生活実態に見合った技術やノウハウと組み合わせてコストを最小限に抑え問題を解決するというものです。このフルーガルイノベーションはインドだけではなくアフリカなどでも行われております。
https://thebetterindia.com/271662/best-innovations-by-indians-2021/
こちらの2022年に作成されたサイト「10 Frugal Innovations By Indians That Give Simple Solutions to Big Problems(インド人が生み出した大きな問題へのシンプル解決策10選)」より2つほどご紹介させていただきます。
・ミッティ・クール
伝統的な陶器職人であり発明家でもあるマンスクバイ・プラジャパティ氏は、粘土を使って新しいものを作ることに情熱を注いでいます。彼の発明の中で最も「クール」なものは、電気を使わずに食料品を数日間保存できる「粘土製の冷蔵庫」でした。このラージコート出身の発明は、2009年5月に英国のケンブリッジ大学、ジャッジ・ビジネススクールが主催した「Centre for India and Global Business」のカンファレンスでも紹介されました。
・バレット・サンティ
「バレット・サンティ」は、バイクを改造して作られた三輪の耕作機で、グジャラート州の農村部でよく見られるようになりました。農家のマンスク・ジャガニ氏が開発したこの機械は、貧困のため牛を手放さざるを得なかった彼自身の経験から生まれたものだそうです。動物の維持費や扱いの難しさを解決するため、彼が持っていたバイクを利用して効率的な耕作機を作り上げました。この革新的なアイデアは多くの農家に支持され、「耕作がまるでバイクに乗るように簡単だ!」と評判になったそうです。
これらの例は、インド社会が直面する資源不足や環境問題に適応しながら、新しい価値を生み出している好例となります。
海外就職に役立つ「Jugaad」精神
日本ではあなたの周りにいる人たちがあなたと似た価値観を持っていることもあり「暗黙の了解」や「空気を読んで行動する」ということができる場合がありますが、インドの職場では、上記記載のように多文化・多宗教の人々が一緒に働くのが当たり前になっていますので、インドの就業環境では、自分の価値観をコミュニケーションとして発しなければ相手に理解してもらえないことがありますし、自分も相手の価値観を受け入れながら協力することが求められます。
こうした多様性の中で、「Jugaad」は調整力を発揮する重要なツールとなります。「Jugaad」の核心は「柔軟性」にあり、厳しい環境や制約の中で状況に応じた解決策を考える力は、ビジネスだけでなく、個人のキャリア形成にも応用できると言えます。
海外が好きで海外で働きたいと考える人、海外で働いてきた人にとって、海外の人とのコミュニケーションの中で日本での常識や既存の枠組みが通用しないことも少なくなかったと思います。そのような状況で役に立つのが、固定観念にとらわれず限られた環境で最大限の結果を出す「Jugaad」のマインドセットになります。
たとえばですが、宗教行事や食文化の違いが仕事に影響を与える場面でも、柔軟にスケジュールを調整し(時にはイベント直前での突然な調整が発生する場合もあったり)、自分の身の回りにいる人たちやステークホールダーとコミュニケーションを積極的に行うことで全員が満足できる解決策を見つけることができます。(インド以外の海外で働く際にも、こうした多様性を尊重し、どんな時も柔軟に対応する姿勢は大きな武器となります!)
最近インド出身のCEOが世界中で活躍をしておりますが(Google(アルファベット)のスンダー・ピチャイ氏、マイクロソフトのサティア・ナデラ氏、IBMのアルビンド・クリシュナ氏、シャネルのリーナー・ナーイル氏、世界銀行総裁のアジェイ・バンガ氏等)出来ない理由にとらわれず、どんな状況であってもポジティブに最短活路を見つけ出す成功哲学として、近年、経営技術としてこの「ジュガール」が取り入れられることも増えているそうです。
難題が発生した場面でも「決して諦めない」「自分の枠を超えた発想で考え行動する」といった粘り強さや発想力があることも、もしかするとインド出身者の活躍の背景にあるかもしれませんね。
Jugaadの問題点x日本が得意なスキル
しかしJugaadにも問題点があります。例えば「持続性」と「安全性」の2つが挙げられます。
例として私の最近のジュガールアイデア?の一つなのですが、シャワーヘッドが壊れてしまったために服をかけるハンガーを浴室内に引っ掛けられそうな場所に引っ掛けて、シャワーを設置しました(インド人夫には不評でしたが)。しかしそのハンガーはいずれ錆びることが予想されるので、また新しいものを設置しないといけなくなります。また、ひっかけている場所がハンガーが落ちにくいと思った湯沸かし器の蛇口のような場所であり安全ではないと思われることと、シャワーの取り外しの際にハンガーも一緒に動いてしまうので出し入れしにくいというデメリットがあります。
上記より、結局いつかはしっかりと固定された見た目もよいシャワーヘッドが必要になってしまいます。
上記はいち個人のあまり良くないJugaadアイデアの例なのですが、例えばインドの自動車会社Tataが荷物運びの主要であった3輪車オートリキシャのドライバーにインタビューしたところ
①短距離で軽量の荷物を運ぶことができる、手頃な価格の車両を求めている
②三輪車よりも四輪貨物車を所有することで得られる「ステータス」への期待から、四輪車を好む傾向がある
という結果が上がったことにより2005年に発売へとつながった「Tata Ace」という低コストミニトラックにて大成功を収めたことに続き、2008年にはインド中にあふれるバイク運転手へ同コストで購入可能ということでアピール可能な「Nano」と呼ばれる軽自動車(発売価格10万ルピ(大体20万円程)!)を販売したところ、予想に反して売り上げが伸びず、2018年に販売停止となったということがありました。理由としては事故にあった時のボディーの強さなどの安全性に関してや低価格を目指したための質の問題、「安価な車」というイメージを押し出しすぎネガティブイメージを回復できなかったマーケティング方法等があったようです。
Pictures are from Wikipedia: Tata Ace & Tata Nano
このように低コストなどの一部にこだわってしまうと、「Jugaad」アプローチを利用したとしても失敗に終わってしまう場合もあります。
※Tata社は様々な車を製造しており、もちろん安全性信頼度最高5つ星の「Tata Altro」や「Tata Nexon」などの素晴らしい車も発売中です。※
文化の異なりを体系的に理解するために数量化するツールである「ホフステードの国⺠⽂化6次元モデル」によると、
日本の性質:不確実性・あいまいなことを避ける傾向がある、長期志向(市場での地位に焦点が置かれ、将来の成⻑・利益を重視する、結果が出るまで辛抱強く努力を行う 等)
インドの性質:不確実性・あいまいなことを気にしない、短期志向(最終損益に焦点が置かれ、四半期・当年の利益を重視する、努力は結果を出すために行う 等)
と真逆の性質を持っている部分があることが示されています。
両国利点欠点がある特徴ですが、この日本とインドの特徴二つをうまく掛け合わせることができるようなコミュニケーションが取れれば、より持続性を持つ問題解決や解決策になると思いませんか?
日本で経験を積んできたあなたのキャリアに「Jugaad」をどう活かす?
インドでの働き方として、以下のようなものが挙げられるかと思います。
①長期的視点の導入
短期的なプロジェクトの成功を通じて信頼関係を築き、長期的なパートナーシップを形成する等、日本の長期志向を活かし、インドの短期目標と組み合わせる。
②柔軟性と計画性のバランス
状況が流動的な中でも、日本の慎重さを活かして複数のシナリオを準備する等、インドの不確実性を恐れない姿勢を活用し、リスクを取りながらも、日本的な緻密な計画とリスク管理を組み合わせる。
③明確なコミュニケーションとプロセスの標準化
インドで働く際には、目標や計画を具体化し、それを共有することで両者が同じ方向に進むようにする等、日本の「あいまいさを避ける」性質を取り入れて、明確な目標や期待値、プロセスを設定することで、インドのスピーディーな意思決定を促進する。
④成果志向と忍耐力のバランス
短期的な目標を設定し、その達成を励みとしながら、長期的な課題についても忍耐強く取り組む姿勢を示す等、インドの「努力は結果を出すため」という姿勢を尊重しつつ、日本の「結果が出るまで努力を継続する」文化を組み合わせる。
⑤多様なチームの活用
日本の細かい計画を得意とするメンバーと、インドの即応力に優れたメンバーを組み合わせることで、強力なチームを構築する等、日本の組織的なアプローチとインドの多様性や柔軟性を生かして、異文化チームを編成する。
⑥異なる価値観の受容
多国籍チームでアイデアを出し合う際、他の人の意見に耳を傾け尊重し、自分のアイデアも融合させつつ最適な方法を柔軟に選ぶ練習をする等、異文化コミュニケーションを学び異なる意見を受け入れることで、より創造的な解決策が生まれる。自分の価値観だけでは浮かばなかった創造的な解決策が生まれる場合がある。
⑦現地文化の尊重と教育の促進
インドでの業務の中で、日本的な長期的視点や品質管理の手法をトレーニングとして提供する等、インドの文化や価値観を尊重しつつ、日本の経験や知識を現地の従業員やパートナーに共有する。
「Jugaad」で未来のキャリアを切り開く
柔軟な発想を持ち、変化に対応する力を身につけることで、海外就職や異文化での働き方においても成功を収めることができる可能性が高まります。特に、インドのような急成長する市場で経験を積むことは、自分のキャリアに新しい視点と価値をもたらしてくれるはずです。
海外就職を目指すために「このスキルが必ずないと難しいかもしれない」「自分では経験が足らないかもしれない」「興味はあるけど企業の人といきなり話すのは緊張する」と思うことが沢山あるかもしれません。
しかし今のあなたに合う求人がある可能性も十分ありますので、それらを生かすためにも、是非一度弊社キャリアコンサルタントと面談を行い、現在のインドマーケットのニーズやあなたにご紹介可能な求人に関して話を聞いていただければと思います。
「Jugaad」に学び、柔軟性を武器にするために次のキャリアの一歩をインドで踏み出してみませんか?
あなたからのご連絡をお待ちできればと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
Emailはこちら⇒ jp.hiring@rgf-hragent.asia