海外生活、海外勤務 現地レポート

インドネシアのデモにて、日常の大切さを考え直した話

Selamat malam!(こんばんは!)

最近の日本では円安や物価高のニュースが続き、生活の変化を実感されている方も多いのではないでしょうか。そんな状況を遠くから見ていた私自身も、インドネシアで思いがけない出来事に直面しました。

8月末から9月にかけて起きた大規模なデモです。ニュースの中でしか見たことがなかった「社会の揺れ」が、まさに自分の生活のすぐそばにやってきた瞬間でした。不安や不便さを感じる一方で、普段は当たり前に過ごしている日常のありがたさを改めて思い知らされる出来事となりました。

デモのきっかけは、政府が発表した燃料補助金の削減と新しい労働法への不満でした。ガソリン代は日常生活に直結していて、バイク通勤や物流に頼るインドネシアでは「今日から生活が苦しくなる」と多くの人が感じたのです。さらに労働法改正は、労働時間や解雇規制の緩和が含まれているとされ、「市民の声が無視されているのでは」という不信感を生みました。そうした不安が積み重なり、学生や労働組合を中心に全国で抗議の声が上がったのです。

最初はシュプレヒコールとプラカードを掲げる平和的なデモでしたが、次第に規模が大きくなり、一部では警察との衝突に発展しました。テレビでは催涙ガスが広がる映像が繰り返し流れ、残念ながら死傷者が出たとの報道もありました。私が暮らす地域でも主要道路が封鎖され、バス停のガラスが割れているのを見たときは、いつもの街がまるで別の場所に変わってしまったようで、胸がざわつきました。普段は賑やかな通りが人で埋まり、クラクションや拡声器の声が夜遅くまで響いていたのを今でも覚えています。

そうした状況を受け、会社からも「不要不急の外出は控えるように」と通達がありました。異国の地で死者が出るデモが起きていると考えると、正直とても怖かったです。家にいながらも窓の外の騒音を聞き、ただニュースを確認することしかできない時間は、心細く落ち着かないものでした。それでも数日が過ぎると政府が市民への説明を進め、補助金の一部を調整する姿勢を見せたことで、少しずつデモも収束に向かいました。

壊れてしまったバス停はすでに改修され、今では以前と変わらず人々が行き交っています。街の屋台も再び賑わい、通勤ラッシュの渋滞に巻き込まれながら「あぁ、日常が戻ってきたな」と実感できるのは何より安心できることです。現地の友人に話を聞くと、「物価や生活は本当に厳しいけれど、暴力的なやり方は望んでいない」と語っていました。SNSでも「声を届けることは大事だが、もっと平和的にやるべきだ」という投稿をよく見かけ、インドネシアの人々の本音はやはり“普通の暮らしを守りたい”にあるのだと感じました。

今回の出来事で強く思ったのは、「当たり前の日常のありがたさ」です。朝のちょっとした挨拶や、同僚との何気ない会話、日々の業務を無事に終えること…一見すると小さな出来事に思えることも、積み重ねてみると大切な時間だと気づかされました。

怖い思いもしましたが、今は街の喧騒が心地よく「また明日も頑張ろう」と素直に思えます。インドネシアの人々の明るさに励まされながら、これからも前向きに日々を過ごしていきたいです。

Sampai jumpa!(またね!)